思春期の悩みのほとんどは、自己の肉体に関するものであるようです。この時期が肉体の成長が最も活発な時期に重なるのですから至極当然ではありますが、それにしてもその深刻さ、重さは当人でなくては理解不能な苦しみに満ちています。特に現代社会が常に平均化に向かい、スタンダードへの追従を強いるものである限り、自分が人より劣っているのではないか、人と違っているのではないかという恐怖は察するに余りあります。精神的アンバランスはやがて肉体の不健康にも繋がるばかりでなく、より深刻なストレスを生み出すのです。彼らの癒しとして近年、美容整形が注目されだしました。
かつて、性器に関する悩みの数々に回答する美容整形のドクターが売りの人生相談コーナー、というのが青少年向け雑誌の名物だった時代がありました。今は美容整形のクリニックが運営するオフィシャルサイトのQ&Aコーナーがそうした役目を担っているわけです。よりパーソナルに、メール相談を受け付けているクリニックも増えてきました。現代のような教育制度と住宅環境は、子供たちをより孤独へと追いやります。以前なら頼りになる先輩や友人に相談できたわけですが、今の子供たちはいじめや差別を恐れてじっと苦しみを抱え込んでいるのです。
ワキガ・多汗症・赤面症・縮毛・多毛といった問題もまた、この世代の「命にかかわる大問題」です。顕著な肉体的差異は彼らを絶望の淵に追いやります。最近ではアトピー性皮膚炎というやっかいな症状が出てきて、子供たちの精神的負担を重くしています。大人にはなんでもないような奥二重やホクロさえも、重大なコンプレックスになり得ます。こうした症状の数々もまた、昔から美容整形の専門分野でした。ただ、かつての時代は、美容整形の入り口を潜りさえすれば解消されるであろう悩みも、なかなか解決することの出来ないものだったのです。
美容整形というところの敷居が、つまり以前は実に高かった。ドクターに相談したくても、なかなかそのチャンネルが開かれていなかったということは言えると思います。昭和の時代には、実は戦前の教育勅語的精神のマイナス部分が日本人のメンタリティの中に根強く残っていて、なおさら美容整形の門を叩きにくい空気があったのは確かでしょう。そうした重たい空気を一気に吹き飛ばしてくれたのは、実に最近になって登場したプチ整形のおかげなのです。
プチ整形のすごいところは、何より切らずに治療できるということで、治療後も気に入らなければいつでも元の状態に戻せる、というおまけもあるわけです。さらに治療費も治療に要する時間もダウンタイムも格段に少なくて済みます。あらゆる面で青少年の治療にこそ向いていたのです。近年の精神カウンセラーの多くが、青少年の肉体的悩みについて、ひとつの処方として美容整形を推奨するようになったのには、そうした背景があるのです。